
剧本角色

目暮十三
男,0岁
めぐれじゅうぞう。 警視庁・捜査一課。

毛利小五郎
男,0岁
もうりこごろう。 私立探偵。

江戸川コナン
男,0岁
えどがわこなん。 工藤新一。

黒川三奈
女,32岁
くろがわみな。 大造の後妻。

毛利蘭
女,0岁
もうりらん。 帝丹高校二年。

黒川大介
男,36岁
くろがわだいすけ。 長男、内科医。
(黒川邸)
目暮十三:黒川氏は、お酒を飲みながらワープロに向かったところ後方から何ものかに殴られ殺害された。凶器は傍に落ちているブロンズ像に間違い無かろう。しかし分からんのはこれだな。ダイングメッセージのようではあるが、J·U·Nってのは何のことだ。
毛利小五郎:(笑う)それはズバリ犯人を指しているんですよ。
目暮十三:何だって。
毛利小五郎:しかも犯人はそこの三人の中にいる。
黒川三奈/黒川大介/中沢真那美:?
江戸川コナン:お~珍しく冴えてる。
毛利小五郎:奥さんの黒川三奈さん、長男の黒川大介さん、そして家政婦の中沢真那美さん 、この三人の中にね。
目暮十三:いいぞ、毛利君。で、誰なんだ、犯人は。
毛利小五郎:黒川大造氏を殺害した犯人は、あなただ。
黒川三奈:?
毛利蘭:?
目暮十三:お、奥さんが?
江戸川コナン:?
毛利小五郎:黒川氏が残したJ·U·Nの三文字、これは英語の6月JUNEを略した言葉です。この6月は水のない月、水無月とも言います、つまり三奈さんです。しかもあなたは…
黒川三奈:6月生まれだからどうだっていうの、何が水無月だから三奈よ。あなた、そんなダジャレで私を犯人にする気なの。
毛利小五郎:いや、これは論理的推理というヤツで…
目暮十三:死ぬ間際の人間がそんな回りくどいことをするかね。ワシだったら、ストレートに犯人の名前を打つぞ。
毛利小五郎:そんな、警部まで。
江戸川コナン:おっちゃんの推理だとここまでか、仕方ねえ。
黒川三奈:無実のものを犯人に仕立てるのが探偵の仕事なの?
江戸川コナン:いつものように、(黒川三奈入)この時計型麻酔銃でまたおっちゃんには眠ってもらうか。
黒川三奈:いい加減なこと言うと、名誉毀損で訴えるわよ。
毛利小五郎:(麻酔銃に打たれる)わあ、チクっと、ヤー、来ました。
目暮十三:おお、来たか、待ってたぞ。
毛利小五郎:(実はコナン)そう、犯人は奥さんというのはホンの冗談です。
黒川三奈:冗談?!
毛利小五郎:(実はコナン)目暮警部、遺体をよぉく見て下さい。黒川氏の手で血がついている指は右手小指だけです。
目暮十三:ん、確かに。
毛利小五郎:(実はコナン)では、キーボードにはどの部分に血がついていますか。
目暮十三:「け」「む」「ろ」と左端の英大文字についとる。
毛利小五郎:(実はコナン)「け」「む」「ろ」についた血は、黒川氏が人差し指でJ·U·Nのキーを押した時に小指についていた血が付着したものですが、右手の小指でわざわざ押しづらい左端のキーを押す人はいませんよね。では、左端のキーについた血は何なのか。おそらく黒川氏は後ろから忍び寄ってきた犯人に後頭部を殴られ右手で後頭部を押さえた、小指の血はこの時ついたのでしょう。そして、振り返った時、再度殴られ、倒れる時にキーボードを小指で引っ掛け落とした。つまり、左端のキー英大文字変換のキーは犯行当時黒川氏の意志で押されたのではなく、倒れる時に偶然押されたモノなんです。そして黒川氏は犯人が立ち去った後、うすれゆく意識の中で、最後の力を振り絞り目の前のキーを押した。かな文字のつもりでね。
目暮十三:じゃあ、黒川氏が打ったJ·U·Nのかな文字は、「ま」「な」「み」。
毛利小五郎:(実はコナン)そう、家政婦の中沢真那美さん、あなただ。
中沢真那美:じょ、冗談ですよね、探偵さん、証拠なんてないんですから。
毛利小五郎:(実はコナン)証拠ならありますよ。あなたは犯行の時、スリッパを脱いだんじゃありませんか。
中沢真那美:?!
毛利小五郎:(実はコナン)フローリングの床ではスリッパの音がして黒川氏に気づかれずに背後から忍び寄ることができないから。あなたは知らない間に床に飛び散った血痕を踏んでしまった。それは不自然に途切れている証拠物件Aが証明しています。あなたの白いソックスの裏には血痕がついているはずだ。
毛利蘭/目暮十三:(確かに血痕があることを見て驚く)
毛利小五郎:(実はコナン)あなたは警察の事情聴取に対し、遺体のそばには近寄らなかったと答えていますね。
目暮十三:足についた血痕を調べさせてもらってよろしいですかな。
中沢真那美:黒川は一年前、私の夫を殺したんです。
黒川大介/黒川三奈/目暮十三:?!
黒川大介:じゃ、じゃまさかアンタはオヤジが心臓手術したあの患者の…
中沢真那美:そうよ、黒川が酒に酔って手術して死んだ患者の妻よ。ちょっと髪型と名前を変えただけで誰も気が付かなかったなんて。あなたたちにとってあの事件は記憶に残るほどのものじゃなかったってことね。私は黒川を告訴するため病院関係者の証言を得ようとしましたが、誰一人協力してくれませんでした。みんな黒川が怖かったんです。
目暮十三:それで、ご主人の復讐を…
中沢真那美:今日が主人の命日だったの。私は後悔してないわ、あの人の恨みを晴らせたんですもの(涙ながらに笑うそして泣く)
目暮十三:行こうか。
江戸川コナン:(毛利小五郎を見て嘆く)またおっちゃんに手柄立てさせちゃったなあ。
(オープニング)
工藤新一:オレは高校生探偵工藤新一。幼馴染みで同級生の毛利蘭と遊園地へ遊びに行って黒ずくめの男の怪しげな取引現場を目撃した。取引を見るのに夢中になっていたオレは背後から近づいてくるもう一人の仲間に気づかなかった。オレはその男に毒薬を飲まされ目が覚めたら…
江戸川コナン:体が縮んでしまっていた。工藤新一が生きているとヤツらにバレたら、また命を狙われ、まわりの人間にも危害が及ぶ。阿笠博士の助言で正体を隠すことにしたオレは蘭に名前を聞かれてとっさに江戸川コナンと名乗り、ヤツらの情報をつかむために、父親が探偵をやっている蘭の家に転がり込んだ。ところが、このおっちゃん、とんだへぼ探偵で見兼ねたオレはおっちゃんに成り代わり、持ち前の推理力で次々と難事件を解決してきた。おかげでおっちゃんは今や世間に名を知られた名探偵。オレはと言えば、小学生に逆戻った。クラスメートの歩美や元太、光彦に少年探偵団を結成させられる始末。ではここで、博士が作ってくれたメカを紹介しよう。最初は時計型麻酔銃。蓋についた照準器を合わせてボタンを押せば、麻酔針が飛び出し人を瞬時に眠らせることができる。次に、蝶ネクタイ型変声器。裏についているダイヤルを調整すれば、大人から子供までありとあらゆる声を出せる。必殺なアイテムなら、キック力増強シューズ、電気と磁力で足のつぼを刺激し筋力を極限まで高めてくれる。犯人を追跡するなら、ターボエンジン付きのスケートボード。ただし、動力源はソーラーパーワだから、日の出ているうちしか使えないのが玉に瑕だ。おっと、忘れちゃいけない。少年探偵団のバッジは、超小型トランシーバー内蔵で発信機もついている超優れものだ。ほかにもいろいろあるけど、一番の武器はやっぱりここさ。小さくなっても頭脳は同じ、迷宮なしの名探偵、真実はいつも一つ!
(阿笠博士の家、4月26日、土曜日)
江戸川コナン:「工藤優作さま」「ミスター·ユーサク·クトウ」父さんにばっかだ。どうせほとんどファンレターなんだろうな。
阿笠博士:そう言や、新一の父さんが書いた「闇の男爵」(発音ナイト·バロン)シリーズの新作もアメリカで大ベストセラーだそうじゃないか。
江戸川コナン:ああ、でも今はスイスにいるよ。世界中あっちこっち移動するんでファンレターをいちいち送ってやんのもメンドイぜ。
阿笠博士:ま、好きにさせてもらってるんじゃ、そのくらいはせんとな。
江戸川コナン:わぁってるよ。ところで博士、何作ってんだ、オレの新メカか。
阿笠博士:残念だが、そんなセコイもんじゃない。人類は空を飛ぶ鳥を研究して飛行機を作り上げた。しかし、いまだかつて昆虫のはばたきメカニズムを完成させた者はおらん。ワシがその第一号を完成させオモチャとして売り出せば、世界中の子供たちの興味を引くこと間違いなしじゃ。そうすればお金がガッポガッポと入ってきてワシは億万長者。(大声で笑う)
江戸川コナン:(os on)いつになったら実現すんだよ。ガキの頃から聞かされて、耳タコだぜ(os off)それにしても、オレのファンレターが一通もないっていうのはもうすっかり世間から忘れられた。ん?オレにだ。森谷帝二?あの森谷帝二か。「突然お手紙を差し上げます、御無礼をお許しください。私はかねがね高校生探偵であられる貴兄のご活躍を新聞やテレビで拝見し、ぜひ一度お目にかかってお話をさせていただきたいと思っておりました。つきましては、来たる4月29日火曜日午後三時半から拙宅で開かれるアフタヌーンティーののガーデンパーティーの御招待致したくここに御案内申し上げる次第です」。
阿笠博士:何じゃ、パーティーの招待状か。
江戸川コナン:博士、森谷帝二って知ってるよな。
阿笠博士:もちろん知ってるとも。東都大建築学科の教授で、日本でも指折りの建築家じゃろう。
江戸川コナン:そんなお偉い先生がなんでオレなんか。
阿笠博士:建築家というのは芸術家でもあるからな。常に新しい刺激がほしいんじゃろう。特にホレ。森谷教授はワシと同じ天才型じゃから。(大声で笑う)
江戸川コナン:(os on)天才型、ねえ。
(電話に)
毛利蘭:え?ガーデンパーティー?
工藤新一:ああ、オレ今関わっている事件の調査でどうしても行けなくてさ。
毛利蘭:新一の代わりにあたしが?
工藤新一:招待状には同伴者歓迎って書いてあるし、蘭の父さんと蘭の家で預かってる、えっと、何つったっけ。
毛利蘭:コナン君?
工藤新一:あっ、そう、三人で行ってくれよ。招待状はもう蘭ちのポストに入れてあっから。
毛利蘭:もう、たまに電話かけて来たかと思えば、勝手なんだから。いいわ、その代わり条件がある。
工藤新一:条件?
毛利蘭:来週の土曜日、私とオールナイトの映画付き合って。
工藤新一:?!
毛利蘭:いいじゃない、久しぶりなんだから。午後10時に米花シネマのロビーで待ち合わせよ。
工藤新一:ちょ、ちょっと待てよ。来週の土曜はまずいんだ、もっと先なら…
毛利蘭:ダメッ、絶対5月3日じゃなきゃダメなの。ねぇ、新一は赤と青のどっちが好き。
工藤新一:赤と青?何だよ突然。
毛利蘭:いいから答えて。
工藤新一:んじゃー、赤かなあ。
毛利蘭:赤?なぁんだ、やっぱり赤か、あたしはそう言うと思ったよ。
江戸川コナン:(os on)赤はおめぇが好きな色だからな。
毛利小五郎:オーイ、メシまだか。
毛利蘭:はいはい、今作るわよ。じゃあね新一、3日の夜10時忘れないでよ。
工藤新一:あっ、お、おい。
江戸川コナン:(言いながら歩く)ったく。映画に行けるくらいなら、パーティーに出てくれなんて言わねーよ。(os on)それにしても、何で5月3日じゃなきゃダメなんだ。何かあるのか、5月3日に。その次の5月4日はホームズがモリアーティとライヘンバッハの滝壺に落ちた日だし。その次の5月5日は子供の日と。
(警視庁米花警察署の前)
目暮十三:よう、コナン君。今から帰るところかね。
江戸川コナン:警部さん、また何か事件?
目暮十三:ま、いろいろとね。おお、紹介しとこう。今度うちの課に配属になった白鳥君だ。
白鳥任三郎:白鳥です。君の話は警部から聞いてるよ、面白いところに気がつくんだってね。
江戸川コナン:そんな、偶然ですよ、偶然。
白鳥任三郎:そうだろうね。偶然が重なることはよくあるから。
江戸川コナン:(os on)(苦笑する)言ってくれるじゃん。
目暮十三:こう事件が多くちゃ、ゴールデンウィークものんびりできそうにないよ。じゃあね。
江戸川コナン:ゴールデンウィーク?そうか、5月3日は憲法記念日だ。だから何だってんだ。
(毛利探偵事務所)
江戸川コナン:え?誕生日?
毛利蘭:そうよ、5月4日は新一の誕生日。5月3日のオールナイトの映画に誘って、0時を回ったところでプレゼントの赤いポロシャツを渡して驚かそうって計画よ。
江戸川コナン:(os on)そうか、5月4日はオレの誕生日だ。すっかり忘れてたぜ。
毛利小五郎:で、何の映画観に行くんだ。
毛利蘭:「赤い糸の伝説」。
江戸川コナン/毛利小五郎:あ、赤い糸?
毛利蘭:あら、知らないの。結ばれる男性と女性は生まれた時から小指と小指が赤い糸で繋がってるって話。それを題材にしたラブロマンス映画よ。
江戸川コナン:(os on)え、少女趣味。
毛利蘭:ほら、これ見て。私も新一も5月のラッキーカラーは赤なの。だからもうこれっきゃないって決めたのよ。
江戸川コナン:(os on)決められてもなあ、一緒に映画観られるワケねぇじゃねーか。
毛利小五郎:ん?ちょっと待って。この映画お前、オールナイトって言わなかったか。
毛利蘭:そうよ。
毛利小五郎:ダメだダメだ。オレは許さんぞ。若い男と女があんな暗い中で一晩中イチャイチャと。
毛利蘭:そんなじゃないわよ。変な言い方しないでよね。だって、新一毎年自分の誕生日忘れてんだもん。年に一回あたしが思い出させてあげてんの、でなきゃムダに年取るだけだから。
江戸川コナン:(os on)(苦笑する)今は逆に縮んでるけどな。
毛利小五郎:し、しかしだなあ。なんと言ってもまだ高校生…
毛利蘭:そうだ。お父さん、森谷帝二って人のガーデンパーティー行こうよ。
毛利小五郎:な、なんだ、いきなり。
毛利蘭:本当は新一が招待されたんだけど行けなくなっちゃって、ね、コナン君も一緒に行こう。
江戸川コナン:うん、行く行く。
毛利小五郎:新一に来た招待状なんかで行けるか。
江戸川コナン:森谷帝二って有名な建築家でしょう。名探偵と名建築家の歴史的な出会いだね。
毛利小五郎:名探偵と名建築家か。(笑う)
江戸川コナン:(os on)(苦笑する)本当、扱いやすいんだよな。
(森谷邸、4月29日、火曜日)
江戸川コナン:(嬉しく笑う)
毛利蘭:コナン君ダメよ、招待状必要なんだから。
毛利小五郎:ふん(喉をすっきりする声)
ガードマン:どうぞ。
毛利蘭:ありがとう。
毛利小五郎:(感心する声で)
毛利蘭:すごーい。
毛利小五郎:まさにイギリス十七世紀スチュアート朝時代の建物だな。
江戸川コナン:?
毛利蘭:えーっ、お父さん建築に詳しんだ。
毛利小五郎:ま、昔は歩く図書館と言われてたもんだ。それより、左右をよく見てみろ。
毛里蘭:(感心する声で)ねェねェ、真ん中に立ってみると右も左も同じだよ。庭も、建物も。
毛利小五郎:こう言うのをなあ、左右対称シンメトリーというのだ。森谷教授は高校までイギリスで暮らしていてな。そのせいか、英国風の建築に心酔し、とくに、とくにだな…(ポケットからペーパーをこっそり出す)古典建築のシンメトリー様式へのこだわりは並大抵じゃない。
江戸川コナン:(os on)(冷笑する)カンニングペーパ…
毛利小五郎:何しろ本名の貞治も左右対称の帝二に変えたぐらいだからな。
江戸川コナン:(os on)ほとんど病気だな。
毛里蘭:でもこんな素晴らしい庭を見たの初めて。
森谷帝二:お褒めにあずかって恐縮です。初めまして、森谷帝二です。
毛里蘭:も、毛里蘭です。父と江戸川コナン君です。今日は新一…いえ、工藤君がどうしても来れなくて私たちが代わりに…
森谷帝二:そうですか。工藤君来られないのですか。
江戸川コナン:でも、このおじさんも名探偵だよ。
森谷帝二:?
毛利小五郎:こら、「も」とはなんだ、「も」とは。(喉を清める)毛利小五郎です。
森谷帝二:おお、あなたがあの有名な…どうぞよろしく。
(森谷邸裏庭)
森谷帝二:どうぞこちらへ、パーティーは裏庭でやっております。
毛利蘭:(感心する声)裏庭も素敵ですね。
江戸川コナン:(os on)(感心する声)さすが有名建築家先生のパーティー。音楽家にモデル、大企業の社長や評論家、そして芸能人。テレビでよく知られてる有名人ばかりだ。
森谷帝二:さ、遠慮なく。午後のひとときをおくつろぎください。
毛利蘭:ああきれい、これみんな手作りなんですか。
森谷帝二:もちろんです。ティーパーティーにはすべて手作りのものを出すのが正式なのです。どうぞお召し上がりください。
毛利蘭:いただきます。
森谷帝二:いかがですかな、お味の方は。
毛利蘭:美味しいです、このクッキー。
森谷帝二:ああ、それは良かった。昨夜から手間かけて作った甲斐がありましたよ。
ある女1:あら先生、お料理なさるんですか。
森谷帝二:こう見えても独身ですからな。ここに出ているものすべてスコーンもサンドイッチもクッキーもみんなわたしの手作りです。何でも自分でやらないと気が済まないタチなんですよ。
ある男1:ああ、なるほど、その精神がいくつもの美しい建築を生み出すんですね。
森谷帝二:私は美しくなければ建築とは認めません。今の若い建築家の多くは美意識が欠けています。もっと自分の作品に責任を持たなければいけないのです。(嘆く)ところで毛利さん、クイズを一つ出しても構いませんか。
毛利小五郎:クイズ、ですか。
森谷帝二:はい。三人の男が経営する会社のパソコンのキーワードを推理するもので。名探偵の毛利小五郎さんならすぐにお分かりになると思うのですが。
ある男2:この人があの有名な毛利小五郎さん。
ある男3:これは楽しみだぞ。(下と同時に)
毛利小五郎:いいでしょう。(上と同時に)
ある女2:本当だね。(下と同時に)
毛利小五郎:どうぞ。(上と同時に)
江戸川コナン:(os on)おいおい、大丈夫か。
森谷帝二:それでは、これが三人のデータです。パスワードは三人に共通する言葉で、平仮名五文字。蘭さんもいかがです?制限時間は三分。さあ、みなさんも一緒にお考えください。
(人達の騒ぎで)
森谷帝二:それでは、スタートです。
毛利小五郎:名前に共通する文字はなしと、生年月日も血液型も違う、趣味もバラバラか。こりゃ思ったより難しいぞ。
毛利蘭:なんだろうね。何か共通点あるかな。
ある男1:私は降参だ、プロの方の答えを待ちましょう。
ある男4:私もです。
毛利小五郎:(力を尽くして考えている声で)
毛利蘭:大丈夫かな、お父さん。
江戸川コナン:ん?(os on)待てよ、この三人生まれた年が一年違いだな…分かったぞ。(os off)桃太郎だ!
森谷帝二:え?
毛利小五郎:も、桃太郎?
江戸川コナン:三人の干支だよ、おじさん。申年に酉年に戌年。ねっ、猿、鳥、犬、みんな桃太郎の家来でしょう。
毛利小五郎:(はっと悟る)
森谷帝二:正確だよ、ボウヤ。いやあ、大したものだ。
江戸川コナン:(笑う)
(拍手と祝いで)
毛利小五郎:(不服の声で)
江戸川コナン:(os on)たまには恥もかかなくちゃね、おっちゃん。
森谷帝二:それじゃ正解したご褒美にコナン君には特別に私の私のギャラリーをご案内しましょう。蘭さんもご一緒にどうぞ。
毛利蘭:はい!
(森谷邸ギャラリー)
森谷帝二:さ、自由にご覧ください。
江戸川コナン:あれ?蘭姉ちゃん、これこの前の…
毛利蘭:ん?あっ、あら、そうよ、黒川さんのお宅だわ。
森谷帝二:そう言えば黒川さん、殺されたんでしたね。
毛利蘭:ええ。
森谷帝二:この家は、私が独立して間もない頃の作品でしてね。この先のものはみんな三十代の頃のものですよ。はは、若い頃はまだ未熟でね、あまり見ないでくれたまえ。
江戸川コナン:ヘェー、橋まで設計してるんだ。
森谷帝二:ところで、蘭さんは工藤君と親しいのですか。
毛利蘭:えっ、ええ、まあ。彼とは幼馴染で、高校も一緒なんです。ただここんとこしばらく会ってなくて。
森谷帝二:?
毛利蘭:でも、今度の日曜日が新一、いえ、彼の誕生日で、一緒に映画を観る約束をしてるんです。
森谷帝二:ほう、それは楽しみですな。では、もうプレゼントも買ってあるんですね。
毛利蘭:いえ、それは土曜日…彼、私と同じで赤い色が好きなんです。それに五月は、二人とも赤がラッキーカラーで、だから赤いポロシャツプレゼントしようかなあって。
森谷帝二:はは、それは素敵なプレゼントですな、工藤君もきっと喜ぶことでしょう。
毛利蘭:はい。
江戸川コナン:(os on)やっべー、誕生日どうすっか考えてなかったぜ。
毛利蘭:あら、これ米花シティビルじゃないですか。
森谷帝二:そうですが。
毛利蘭:私たちここの米花シネマ1で映画を観るんです。3日の夜10時にロビーで待ち合わせて。
森谷帝二:そうですか、このビルは私の自信作でしてね。若いカップルがバースデーを迎えるにはこれ以上のところはありませんよ。
江戸川コナン:(os on)ど、どーすりゃいいんだよォ。
(毛利探偵事務所)
毛利蘭:じゃ、夕食は出前でも取って食べてね。
江戸川コナン:うん。夜の10時まで10時間。本当困ったな。
毛利蘭:行ってきまーす。
毛利小五郎:(睨みが発見されて驚く声)なんでオレが隠れるんだ。
(阿笠博士の家)
阿笠博士:だから、もっと前に断りゃよかったんじゃ。
江戸川コナン:仕方ねえじゃねえか。毎日楽しそうにカレンダーに向かう蘭を見てたら、とても断れねえよ。博士、新一の精巧なロボット作ってくれよ。
阿笠博士:そいつは無理じゃ。いくらワシが天才でもな(笑い)
江戸川コナン:だよな。
テレビ報道1:一昨日、東洋火薬の火薬庫からオクトーゲンを含む大量の爆薬が盗まれた事件で警視庁は百人を越す警察官を動員して捜査に当たっていますが、依然として犯人の手掛かりはつかめていません。
阿笠博士:大変な事件じゃのう、これは。
テレビ報道1:それでは、次のニュースです。昨夜遅く山手区葉井戸町の黒川さん宅から火が出て(下と同時に)
江戸川コナン:ああ、オクトーゲンをプラスチックで固めたものが、プラスチック爆弾だからな。(上と同時に)
テレビ報道1:付近の家数軒が類焼しました。
江戸川コナン:この家、この前の黒川邸だ。
阿笠博士:お、あの殺人事件のあった。それにしても、ここんとこ放火が多いのォ。(下と同時に)
テレビ報道1:なお、最近多発しています一連の放火事件と手口が似ていることから、警察では同じ犯人の可能性も高いと見て捜査する。
(電話きた)
阿笠博士:はい、もしもし。
犯人さん:(以下の犯人さんのセリフは全て変成器で電話に)工藤新一はいるか。
阿笠博士:ちょっと待ってくれ。新一、キミにだ。
江戸川コナン:え?どうしてオレがここにいるって…
阿笠博士:何を言っとる。キミの家にかかってきた電話はすべてここへ転送されるようになっておるじゃろうが…
江戸川コナン:(きまり悪く笑う)そうだった。悪い悪い。何しろ最近、オレへの電話なんてないから、すっかり忘れてたぜ。
阿笠博士:なんか、相手も変成器使ってるような、変な声じゃぞ。
江戸川コナン:?
工藤新一:もしもし。
犯人さん:工藤新一か。
工藤新一:はい。
犯人さん:ニュースを見たか。東洋火薬から爆薬を盗んだのはオレだ。