
剧本角色

王子
男,0岁
遠い星からやってきた小さな男の子。可愛らしくしゃべる。

飛行士
男,0岁
飛行機の操縦士。20歳前後。
N
男,0岁
ナレーション。
星の王子さま
LE PETIT PRINCE
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
Antoine de Saint-Exupery
N:そんな風に王子様の話を聞いていくうちに、いつしか8日目を迎えていた。相変わらず飛行機の修理は終わらず、飲み水も底をついていた。
飛行士:「……ねえ。 君の思い出話はとっても面白いけど……もうやめにしないか?水がもう空っぽで大変な状態なんだ。もうすぐ僕たち、死んじゃうかもしれない……」
王子:「たとえ死にそうでも、お友だちがいるってことは良いことだよ?ぼく、キツネと友だちになれてすごく嬉しかったんだ」
飛行士:「……っ! 王子様には、危険というものがわからないんだ。お腹がすいたこともなければ、のどが渇いたこともなかったんだろう?」
王子:「ぼくだってのどがカラカラさ。井戸をさがしにいこうよ」
N:僕はくたびれているふりをした。砂漠をあてもなく井戸を探しに行くなんて馬鹿げたことだと思ったからだ。それでも僕たちは歩き出した。
飛行士:「君も、のどが渇いているのかい?」
王子:「お水も心にいいのかもね……」
飛行士:「……?」
王子:「あのね、星が綺麗なのは、目に見えない花があるからなんだよ」
飛行士:「……そうだったね」
王子:「さばくもそう。とってもきれいだね」
N:それは本当だと思った。僕はいつだって砂漠が好きだった。砂漠では何も見えず、何も聞こえないのに、何かが静かに輝いている……そんな気がする。
王子:「あのね、さばくがきれいなのはね」
飛行士:「うん」
王子:「どこかに井戸をかくしてるからなんだよ」
N:それを聞いて、砂漠の持つ輝きの理由が分かった気がした。ずっと昔……。僕が子供の頃に住んでいた家には、宝物が埋まっているっていう言い伝えがあったんだ。
N:もちろん、誰もそれを見つけていない。それでも、その宝物は子供の僕にとって家中を魔法でいっぱいにしていた。家はその奥に秘密を隠していたのだから。
N:歩き回ってたどり着いた井戸は、サハラ砂漠にあるものとは違っていた。普通、砂漠の井戸は砂の中に掘られた、単なる穴でしかない。それなのにこの井戸はというと……村にあるものみたいだった。
飛行士:「不思議だ。桶に滑車にロープ……全部揃ってる」
王子:「ねえ、聞こえる? 僕たちが井戸を目覚めさせたから、井戸が歌っているよ」
飛行士:「うん、きれいな音だ……。あ、僕が水をくむよ。君には重すぎるから」
N:ロープを引っ張ると、滑車がカラカラと音を奏でる。僕は、ゆっくりと、桶を井戸の淵まで持ち上げ、王子様と2人ですくって飲んだ。