マコは机で寝ている。

　アヤノが入ってくる。マコの机に乗っているノートを盗み見て、内容を声に出して読む

アヤノ：冬も中ごろ二つの心きれいな心ときたない心昼下がりの街に独りひっそりと静まるあまり「静寂がうるさい」ぽつりと出た独り言別れることに変わりないことそれは言葉にならないけど

　マコが起きる

アヤノ：お、マコおはよー

マコ：　あれ、私、何でここに。

アヤノ：何寝ぼけてんの。部活でしょ。我が演劇部は今、存続の危機である！

マコ：　そんな堂々と言われても。

アヤノ：だって２人だよ。どうやって音響と照明をピコピコさせるの？

マコ：　さぁね。てか、今日って何月何日？

アヤノ：今日は２月２９日。４年に一度しかない日だね。

マコはがたっと立ち上がる。

マコ：　大変！今日は追悼式だ。

アヤノ：追悼式？何の事？

マコ：　えっ

アヤノ：えって何？

マコ：　アヤノは忘れたの？四年前のこと。あの大震災の事。

アヤノ：…忘れたも何も。だいしんさいって何？大きな神様をまつる祭りのこと？

マコ：　違うよ。大きな地震のことだよ。四年前のこの日、津波が町を呑み込み何もかも失った。家族も友達も居場所も。私達は逃げてこの町にやってきた。

アヤノ：どうしちゃったのマコ。悪い夢でも見たんじゃないの？

マコ：　夢？あれが夢なわけない。４年前、確かに私達は被災した。友達のゆうやとかみ　さきだって波にのまれて…

アヤノ：ちょっと待って。ゆうやもみさきもいるよ。

マコ：　え。

アヤノはスマホを取り出し、電話をかける。

アヤノ：あ、もしもし。私だけど。うん私。だから私だって。そう、その私。今から部室これる？マコが寝ぼけておかしくなったみたい。うん。ちょっかいかければすぐなおるよ。来てくれる？うん、ありがとう。お願いね。じゃ。

マコ：　今誰と話してたの？

アヤノ：みさきだよ。ゆうやも一緒にくるって。

マコ：　どういうこと？

アヤノ：それはこっちのセリフだよ。

マコ：　アヤノはあの日のことを忘れたの？

アヤノ：な、なにこれ！

マコ：　地震だよ。早く机の下に！

　明転

　マコが机に突っ伏して寝ている。

　アヤノとゆうやとみさきが見守っている。

アヤノ：なんか寝ちゃってるね。

ゆうや：寝かせてあげようぜ。きっとポエムを書きすぎてろくに寝てないんだろう。

みさき：そうね。

ゆうや：あのさ、気になってたんだけど、アヤノはどうして電話するときいつも私しか